無何有郷、utopia ユートピア


★  中国の戦国時代思想家に逍遥遊(荘子)という人物がいました。
生没年不明ということですが、凡そ西暦前 370年~300 年を清貧に生きた人物のようだとの説もあります。  その荘子が唱えた理想郷、すなわち、自然のままで、何らの人為もない楽土のことを、無何有郷(ムカウノサト・ムカウノキョウ)というのだそうです。
  平凡社の百科事典に詳しく紹介されています。  読みながら、このような思想家がこん日の永田町の薄汚い政治屋たちに対して活を入れて貰いたいと思いました。
  万葉集(16)には「心をし無何有郷に置きてあらば」というような表現があるようでして、これも荘子からの引用でしょうか...

★  一方、1745年~1853年をロンドン中心に生きた、英国の優れた政治家、思想家にトーマス・モーア Thomas Moreがいました。  オランダ人の人文主義者で古典語学に造詣の深いエラスムスやコレットと交友関係にあり、古典や法律を学び、枢密顧問官や下院議長や大法官を歴任した信念の人物でした。

  忠実なローマ・カトリック教会員としてマルティン・ルターの宗教改革が起こったときこれに反対し、ヘンリー8世の「国王至上主義法」に反対し、国王のキャサリンとの離婚と、アン・ブリンとの結婚に反対し、反逆罪に問われて処刑されました。

  英国王権と教会権力から自由な社会を理想国家と考え、「ユートピア」という造語を作り出し、「ユートピア」という題名をつけて、最初ラテン語で出版しました。
  モアーが、ギリシャ語の ou = noと topos = placeを組み合わせて編み出した造語で、「どこにもない場所」を意味し、副題には「社会の最善政体について」をつけています。  独裁的国王権力と教会権力が支配する英国社会の堕落と貧困とは裏腹に、モアーが心から願った理想的国家像 On the Best State in a Republic  が描かれており、新世界に向かう大西洋上の島で理想郷が建設されて行くという主旨です。

  私の手元に、彼の生涯を描いた映画ヴィデオがあります。
「わが命つきるとも A Man for all Seasons」と題した作品で六つのアカデミー賞を得たものです。  王権か信仰か...どちらを選ぶのか...を問いかけた作品です。

★  さて、いつものように前書きが長くなりました。
アダムとエヴァが、理想郷であったエデンの園で罪を犯し、理想郷を喪失してまって以来、人類は荒廃しきったこの世の中に在って、失われてしまったユートピアを捜し求めて現在に到っています。  エゴイズムと死が人間を支配したままです。

★  しかし、エペソ書1章9節~14節から、聖書が語る理想郷を考えてみましょう。
そこでは、「神ご自身が定められた時に従って、天に在るものも、地に在るものもがことごとくキリスト・イェスに在って一つに帰する‥」と書いてあります。

  私たちが受け継ぐべき神の国に関して言及されています。
そこでは、贖われた者たちが神の栄光を誉め讚えるとも記されています。

  それは黙示録21章と22章が語る内容を彷彿させています。
新しい天と新しい地が描かれ、新しい聖い都、新しいエルサレムを示唆しています。
そこでは、主なる神が私たちの神となり、私たちは神の子供として描かれています。
  地上生活ではひとときも絶えることがなかった溜め息と涙がすべて完全に拭い去られ、もはや死もなく、悲しみもなく、叫びもなく、痛みもない状態が現れてきます。

★  この厳しい、寂しい、辛い地上人生に在っては、目標を定めて、希望を抱いて、ひすらに来たるべきよりよき世界へと歩み続けて行く巡礼者の人生、求道者の歩みの喜びを私たちは味わっています。  そして、そこには常に同行者イェスが同伴されているという確信と体験の喜びが私たちには与えられています。

★  そのことを私たちは、ひと回りの初め日ごとに、主の食卓に招かれて侍るときに確認しているのです。  神の国、天国というものは、ひらべったいある一定の空間、一定のスペースを持つ、周囲に囲いのある場所という意味では決してありません。神の愛と義が支配する、神の主権が及んでいる状態を指し示しているのです。

  そのことを、私たちが主の食卓に与るとき、同行求道・巡礼者たちと共に、神の国をすでに体験していると言えるのです。
  私たちの無何有郷、ユートピア、理想郷とは、イェスにあってすでに来ている現実であり、また、私たちが希望を抱いて求道し続ける人生行路、巡礼し続ける人生航路の目的地でもあるのです。  同伴者イェスと共に、同行するエクレシアの仲間と共に歩み続けて行きたいものです。


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